前回に続き、音楽情報誌「みんなの歌謡曲」に掲載されたインタビューを原文ママで掲載いたします。
橘あきら『袋田温泉~哀愁のラブソング~』を語る!No.2
前回に続いて<橘あきらの温泉紀行シリーズ>3作目の『袋田温泉~哀愁のラブソング~』を発表した橘あきらさんにお話をお伺いしました。
――歌詞の背景について、もう少し詳しく聞かせて下さい。まず、1番の歌詞ですが、「最後の旅だと わかっていたの」と、しんみりした書き出しで始まっています。
橘「本人には知らされていないのですが、不治の病に冒された最愛の夫に対する感謝の気持と二人だけの思い出作りのために袋田温泉を訪れた妻の心境を歌詞に込めました」
――年老いた夫婦が、袋田の滝を前に肩寄せ合って歩んできた人生を静かに振り返っている情景が目に浮かびます。そして勇壮な滝と対になっているのが静かに流れる久慈川。静と動。絶妙のコントラストは、まさに自然が作ってくれた昭和演歌のための“舞台装置”ですね。
橘「二人が泊まったのが、歌詞にもある『思い出浪漫館』。星空の下、せせらぎの音に包まれた露天風呂。そのすべてを1番の歌詞に盛り込みました」
――シリーズ第1弾の『伊香保挽歌』にも共通しているのですが、橘さんの作品は一編の抒情詩というか、物語を聞いているような気がします。
橘「デビュー当時、恩師のジェームス・三木先生に教えられたことですが、単に譜面通りに歌うのではなく常に歌を聞いて下さる方々全員を“あきらワールド”に招待したつもりで歌うことがプロ歌手の使命だと思っています」 (続く)